お前は、俺のもの。
あれから、私は鬼課長と一緒に自宅にもどり、両親からお泊まりの延長の許可を得てから一週間が過ぎようとしている。
両親は水族館の一件を聞くと、さすがにほんわかな表情を一変させ「しばらく仕事を休め、警察を呼べ」と騒いだ。それを上手く鎮めたのは鬼課長だ。
「まだ状況が把握できていない今、慌てて気を揉む必要はありません。会社では凪さんを見てくれる上司や同僚もいます。外では僕が一緒にいます。今は注意して様子を見るほうがいいでしょう」
両親の心配を配慮しつつ、「自分が一緒だ」と安心感を持たせるあたり、チラチラと彼の目論見が垣間見えた気がした。
部屋でボストンバッグに必要なものを詰めていたら、春奈が顔を出した。
「お姉ちゃん、狙われる心当たりはないの?」
そう聞かれて、動かしていた手が止まった。
──狙われる、心当たり。
頭の中にチラホラ浮かぶ、あの人の顔やこの人の顔。
「ははっ。全く心当たりがないと言えば嘘になるけどね。でも私たちが水族館に行くことは、誰も知らなかったことよ。彼も誰かに言ったとは思えないし」
「なるほど。でも一ノ瀬さんはモテそうだから、これからも苦労するかもしれないよ?」
と、半分からかうように笑う。
「もう、他人事だと思って」
ムスッと顔を歪める。
「もし一ノ瀬さんはお姉ちゃんの手に余るようなら言ってね。私が周りを蹴散らして一ノ瀬さんと付き合うから」
「ご心配なく。そんなことには、なりません!」
春奈の度の過ぎたセリフに、つい声が大きくなる。彼女はニヤッと笑って行ってしまった。
もう、鬼課長のことになると気が休まらない。
そんなことで両親からは、
『誕生日プレゼントは「彼氏のボディーガード&宿泊延長」の承諾権』
を貰ったのだった。