お前は、俺のもの。

九月になったある日、朝からテレビの報道番組は夕方から最も接近してくるという、台風の情報が続いている。それは過去最大の台風の中で五本の指に入るであろうと予測されているだけに、美人なアナウンサーも「できるだけ早い帰宅を」と、画面の中で不安そうな顔をしていた。

確かに台風の不安もそうなのだが、私の不安は別のところにあった。

昨日から鬼課長の様子がおかしい。普段と違い、落ち着きがないように見える。そして壁のカレンダーを見ては難しい顔をしている。
カレンダーには明後日の日付から二日間に赤マルがついている。これはモデルルーム見学会の日のマルだ。鬼課長も私も楽しみなだけあって、ついカレンダーに記念としてマルをつけたのだ。

私は昨夜に鬼課長が作り置きしたスクランブルエッグを温めて食パンを焼き、コーヒーを入れた。
「な、梛。朝ごはんにしよう…?」
と、声をかけた。
彼はサッと朝食を済ませると、
「わるい。先に会社に行ってる」
と言い残して、一分も経たずに出勤して行った。

──一体、どうしたのだろう。

私には全く心当たりがなかった。

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