お前は、俺のもの。

それが発覚したのは、街が強風に包まれて激しい雨が窓ガラスに叩きつけられるようになった、午後三時過ぎだった。

鬼課長の、事務所全体に聞こえる程の叫び声が、デスクワークをする社員たちの手を止めた。

「……はあっ?!キャンセルの電話があった、だとっ?!」

外出先から戻ったばかりの加瀬部長が、事務所のドアの前で怪訝そうな顔をする。
鬼課長の立ったままスマホを耳にした姿の横の席には私と由奈、私の向かいに綾乃がいる。
当然、私達も何事かと彼を見つめる。

鬼課長の焦燥感に駆られた表情に、事務所の空気が一気に緊迫して冷えきっていく。
彼から放つ「ブリザード・オーラ」を当てられて、私は体をブルっと震わせた。
彼の電話のやり取りは、まだ続いている。

「はい、はい……え?本当ですか?」
と、低音ボイスが動揺する。その逆三角形の瞳が、私の視線とぶつかる。
そのまま会話を続ける鬼課長。

「そうなんですか。いえ、こちらこそお任せしているとはいえ、定期的に確認のご連絡をするべきでした。本当に申し訳ありません。はい…本当ですか。大変、助かります」

一体、何の話をしているのか、わからない。
問題のその電話は、十分ほどで終わった。

「はああぁ」と大きな息を吐く彼の横に、加瀬部長が立った。
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