お前は、俺のもの。
「お前にしては珍しく焦っているな。何があった?」
上司の顔をして立つ彼に、鬼課長が口を開く。
鬼課長は眉間にシワを寄せたまま、何かを考えているらしく視点が揺れている。そして、ポツリと言った。
「…モデルルームに使用する商品を発注していたんですが…キャンセルされていました。どうりで昨日、商品が届かなかったはずです」
「キャンセル?」
加瀬部長の眼鏡の奥の目が厳しくなった。
鬼課長はデスクの上の書類を片付け始めた。
「モデルルームの発注に関して、俺がキャンセルした商品も、誰かに頼んでキャンセルした商品もありません。ただ…」
彼は私へ視線を下ろす。
「発注先の工房の社長が言うには、キャンセルの電話は女性の声で「一ノ瀬リビングの満島だ」と名乗ったそうです」
その瞬間、話を聞いている事務所全員の目が、一斉に私に向けられた。
「え?わ、私?」
身に覚えのない、寝耳に水状態で心臓の脈を感じながら、ただ首を横に振るしかなかった。
「また、満島さんが問題を起こしたんですか。飽きないですね、あなたも」
久々に聞いた、嫌味口調とこの声。
河野くんだった。グレーのスーツにいつもの甘めな顔なのに、私に対してはいつも非難の嵐だ。