お前は、俺のもの。
「自分の後輩を虐めることじゃ足りなくて、今度は自分の上司に嫌がらせをしたんですか。散々人に迷惑をかける社員なんて、ここに必要なんですか」
河野くんは、どこまでも由奈を贔屓したいようだ。
彼の言葉に、周りがざわめく。
あまりの失礼な言い方に、さすがの私も腹が立ってきた。
「私は発注のキャンセルなんてしてないよ。担当は一ノ瀬課長だから、私が勝手にキャンセルはできないよ。それに…」
──昨日届く商品なんて、鬼課長から何も聞いてないのに。
私は「ここを辞めろ」と言わんばかりの河野くんを見つめる。
しかし彼の目は冷たい。
「どうですかね。だって、発注先が「満島さんがキャンセルした」と言ってるんですよ?」
「…河野」
唸るような低音ボイスで、漂う空気の悪さに再び冷たい空気が被さってくる。
両目の据わった鬼課長が、河野くんへ一歩踏み出した。
──もしかして、言い合いになるかも。
私は怖くなり鬼課長を引き止めようと近づこうとしたが、それより早く前に出された手で彼の行動が遮られた。
加瀬部長だ。
「一ノ瀬。これからどうするかを決めろ」
いつもの口調に、鬼課長も剥き出した牙を収めたようだ。
それでも鬼はギロッと河野くんを睨んで踵を返して、デスクのジャケットと鞄を持つ。
「商品は出来上がっているというので、取りに行ってきます。危うく工房の展示品になるところでした」