お前は、俺のもの。
「お前は、何か勘違いをしているようだな」
加瀬部長は低い声で彼を見据えた。
「彼女たちは言葉で「営業事務」といっても、各々ちゃんと仕事を持っている。元々その手にあるリストだって、お前の仕事なんだぞ。自分の仕事を頼んだ関口が出来ないからって、お前が「じゃあ他の奴に頼めよ」というのは、自分の仕事を自分でたらい回しにしているんだよ。気づかなかったのか?」
「俺は…資料の作成やデータ入力は全部関口たちの仕事だと思っていたから、このリストも三人の中の誰かに入力してもらえれば、それでいいと思ってたんです」
と、河野くんの顔色が白くなっていく。
加瀬部長のメガネの奥の、河野くんに向けた厳しい視線は変わっていない。
「一応、営業部全員には教えたつもりだったけど?「自分の仕事に対する責任」と「事務員に仕事を依頼する感謝の気持ち」を」
と、営業部のボスはデスクの並ぶ事務所を見渡す。
既に外出している社員もいるので男性社員が数名いるだけだったが、その殆どが話を聞いていたようで、「うんうん」と頷く人もいれば「あーあ、河野やっちまったな」と、からかう声も聞こえた。