お前は、俺のもの。


いつもなら通勤時に素通りする駅に降り立つ。
都会的なイメージではないが、今どきのオフィスビルと数年前にオープンした複合商業施設で活気が少しずつ上がっている、発展途上の街だ。

駅前の、軒を連ねたお店の一角に「洋菓子FUFU」がある。
去年、古くなった店舗をリフォームして、カントリー風の店舗で大きな窓も人目を引き、店内も明るさを取り入れた柔らかい雰囲気のお店になった。甘すぎずナチュラルな店構えになったことで性別や年齢問わず人気が上がり、お店に入りやすくなったと思う。
今、私の目の前でも母と同年代の女性が入店して、一人の男性が店から出てきた。

…男性?

その後ろ姿に目を奪われる。
ショップバッグを片手に歩道を横切って、路肩に停めた車に乗り込む。
あの背格好、あの色のスーツ。
「一ノ瀬リビング」と書かれた車が、私の横を通り過ぎていく。

運転席には逆三角形の目をした、見間違うはずのない男性が、助手席には何度も見かけたことのある専務秘書の川添穂香の姿が。
彼女は綺麗な顔で、運転席の男に顔を寄せて何か話している。男は前を向いて運転していた。
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