お前は、俺のもの。


「おい」

仕事に区切りをつけた私は、忙しそうにしている綾乃に代わって書類を宅急便で送るために、封筒を持ってエレベーターに乗るところだった。
後ろから呼ばれ、腕を引っ張られた反動で三センチヒールが滑り、転びそうになる。
「わっ」
ビックリして声を上げたと同時に、脇の下から差し込まれた腕にガッシリと支えられる。

誰の声か、顔を見なくてもわかる。
「あの、なにか」
後ろから片腕で抱かれている体勢が恥ずかしくて離れようと体に力を入れてみるが、それ以上に彼の腕は力強かった。

「凪、こっちを向け」

耳元で囁かれ、肩がビクッと震える。
「早く、向いて」
「…い、いや、です」
断ると、私の胃のあたりに回った腕が、更にグッと力を込めて私を引き寄せる。

「お前、俺を避けているだろ」
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