お前は、俺のもの。
もちろん、この件は休暇に入る前の綾乃を捕まえて、「風鈴」でビールとやきとりを両手に愚痴を言わせてもらった。
「夏期休暇の日を勝手に決められ、どうして三日間もあいつの言いなりにならなきゃいけないのよ」
と、不満ばかりこぼしているのに、向かいの綾乃は「よし、よし」と言いながら小さくガッツポーズをしてご機嫌だった。
私の夏期休暇期間の三日目の出勤日はレセプションパーティーの日で、翌日から五日間の休暇が待っている。
ロッカールームのある十階でエレベーターを降りると、「満島さん」と小さく呼ばれた。横を向くと総務部の石川係長が軽く手を振っている。
ロッカールームへ向かう数名の女性社員のなかに、小堺るみも歩いて行った。
石川係長は彼女たちが廊下の角を曲がったことを確認すると、私へ向き直る。彼は四十代半ばくらいの、少しふっくらした体型の優しい顔つきの男性だ。
「朝から引き止めて、ごめんね」
目尻を下げて話してくる彼に、私は挨拶をして「大丈夫です」と返事をした。
何事かと思っていると、石川係長は右手を差し出した。
手のひらには、一本の鍵がある。