死者の時間〜最期のメッセージ〜
「えっ……」

頭蓋骨を慎重に開き、脳を見た藍は思わず声を出した。

「どうした?」

如月刑事が藍が見つめている脳へと視線を向ける。藍は言った。

「桑原さんは、頭部外傷を起こしていた。でも貯水槽に落ちて亡くなったのなら脳は損傷しないはず……」

「頭部外傷ってあれですか?頭に強い力が加わることで頭の皮膚や頭蓋骨、脳を損傷するっていう……」

原刑事がそう言うと、「お前にそんな知識があったとは驚いた。今日は嵐にでもなるのか?」と如月刑事が言う。

「俺だっていつも如月さんに怒られっぱなしじゃいけませんからね!勉強しました!」

原刑事が腰に手を当て、得意げに笑う。如月刑事は原刑事のおでこを指ではたいた。原刑事の「イテッ!」という声が響く。

「とりあえず、桑原さんは頭部外傷が原因で亡くなったんだな?」

「はい。しかし、貯水槽に落ちただけでは頭部外傷は起こらないかと。彼はどこかで頭を打ち、その時に頭部外傷を起こしたと思われます」
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