死者の時間〜最期のメッセージ〜
「この中にご遺体が……」

「ああ。遺体はそのままにしてある」

驚く藍の背中を軽く押し、如月刑事が言う。藍はゆっくりとハシゴを登り、中を覗き込む。貯水槽の水の中に、虚ろな目をした男子生徒の遺体があった。

「……誤って貯水槽に落ちたのかしら。とりあえず、解剖をします」

「わかった」

遺体は貯水槽から運び出され、藍は解剖の準備を始めることにした。



藍と如月刑事たちは近くの病院を借り、遺体を解剖することになった。

「午後二時四十分、解剖を開始します」

藍はメスを手に取り、服の着ていない遺体を見て目を見開く。男子生徒の体には無数の痣があった。最近できたものではなく、長年にわたって誰かに暴力を振るわれたようなものだ。

「これは、学校でのいじめによるものでしょうか?それとも、虐待を受けていた?」

藍は如月刑事と原刑事を見つめる。原刑事がメモ帳を開き、言った。

「亡くなったのは、三年生の桑原陸人(くわはらりくと)。アルバイトをコンビニでしていてクラスでも目立つタイプではないごく普通の生徒だったそうです」
< 7 / 30 >

この作品をシェア

pagetop