死者の時間〜最期のメッセージ〜
「心臓などに異常は見られませんでしたので、明日脳の方を調べる必要があります」

藍は取り出した桑原陸人の内臓をホルマリンに漬ける。そして、使ったメスなどを片付け始めた。片付けが終わり、三人が解剖室から出た直後、「如月さん!」と警察官の一人が話しかける。

「貯水槽のそばに、女子生徒のものと思われる現代文の教科書が発見されました」

「一応、その女子生徒に話を聞こう。貯水槽のそばに落ちていたなんて引っかかる。まだ事故か事件かははっきりしていないしな」

如月刑事がそう言い、警察官は「わかりました!」と敬礼する。

「如月刑事、私は明日ご遺体の脳や髄液などを調べます。明日の解剖の結果で事故か事件かどうかはわかると思います」

藍がそう言うと、如月刑事は「よろしく頼む」と藍の肩にポンと手を置く。

「帰りはどうするんだ?送るぞ?」

「大丈夫よ、電車で帰るわ。まだ電車はあるし」

藍は如月刑事に背中を向けて歩き出す。シュンと落ち込む如月刑事を、原刑事がこっそり慰めた。
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