希望の華
「なっ...!」
男たちは素っ頓狂な声をあげる。
この男たち、足を狙ってくる。室内の戦いではその方が有利なこともあるということをわかってる。
二人がこちらに寄ってきているのを確認して、私は“神楽”の方へ壁を使ってもう一度飛んだ。
“神楽”を握った右手を左手の手首に打ち付けた。
すっと刀へと形をかえた“神楽”に彼らはまた驚きの声を上げる。
向かってくる二本の刀を捌き、ここからの脱出を図る。
私は出せる限りの力で目つきの悪い男の刀を押し返し、その男の額の前に“神楽”を突き付けた。
軽く息を整えていると、目の前の男が大きな声を上げた。
「総司!」
やばい、と思ったときにはもう遅かった。
私の首元から伸びるすらっとした白いもの。
まったく温かさを持たないそれに、私は生まれて初めて命の危機を感じた。
忍といえど所詮戦争がなくなってから何十年も経った時代の人間。
手入れのために“神楽”を抜くことはあれど、真剣を突き付けられたことはない。
直感で、私はここにいてはいけない、そう感じた。
私は親指で神楽を軽くノックして、もとの木の棒に戻した。
私が戦意喪失したことに気付き、私の後ろの着流し男は私の首から刀を離した。