希望の華
「お前、何者だ?」
私の前に男が仁王立ちし、質問を投げかける。
「ここは、どこ?」
「おま「何もわからない。」
この状況が全く。
周りの空気が凍るのを肌で感じた。
これ、勘違いさせたかもしれない。
いや、この際記憶喪失を偽ってみるのも手かも。
「ここは京の壬生浪士組屯所。」
壬生、浪士組...?
それは私の住む世界には存在しないもの。
江戸末期、幕末に存在した組織。明治維新を何年か遅らせたともいわれる組織だ。
壬生浪士組、新撰組があったのは私の生きる時代の約百五十年も前のはずだ。
つまり、私が時空を移動する、タイムスリップしなければありえない。
タイムスリップなんて、そんなファンタジー、あってなるものなのか。
...いや、ability personという非現実的な存在である私がタイムスリップをファンタジーなもの、と片付けてしまってもいいのか。
仕方ない、ここは一旦私がタイムスリップしたという仮定の下、話を進める。
そうすれば、この男たちが刀を持っていることも壬生浪士組を名乗っていることも頷ける。
着流し男のことを総司、と呼んだ。
新撰組の総司、といえば思い当たるのは一人。
天才剣士と謳われた、一番組隊長にして組で随一の剣の腕を持つ沖田総司。
幹部である彼を呼び捨てにできることからしてもう一人も幹部の人間なのだろう。