Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
ろくに私と関わろうとしない父が一緒に食事を取りたがるときは大抵私の行いが悪いときだ。
テストの点が悪かった時、帰りが遅かった時、不純異性交遊をしていた時。
家族て取り囲む食卓というのは本来温かくて楽しい時間であるはずなのに、我が家はどんなに好物が出されていようと食事の味がわからないほど苦痛な時間だった。
「お前、最近ほとんど家に帰っていないそうだな」
「はい。すみません・・・」
「まあもういい大人なんだから、付き合いもあるだろうしとやかく言わないが、お前は相手を見る目がない」
(家政婦のババアめ、朝帰りのことチクりやがって)
「逢坂蓮」
突然、彼氏の名前をフルネームで呼ばれると、驚きとともに緊張が走る。
「彼がどうかしましたか?」
しかし、後ろめたさなど一切ないし、父も気に入ってくれると自信があった。
「お前はそいつと付き合っているそうだな」
「ええ、彼は本当に優秀ですよ。同期一仕事ができますし、リーダーシップもありますので。私は彼にプロポーズされたら結婚するつもりです。」
「彼の働きぶりは俺も知っている。しかし、彼のことを調べさせてもらった。」
机の上に、彼に関する調査報告書を並べた。
「彼の母親は、高校在学中に妊娠し、卒業後に出産。父親も同じ年で低所得であるにも関わらずパチンコ依存。
パチンコへ行くために、幼い子供をネグレクト。
消費者金融に100万円ほどの借金がある。彼自身は自分でアルバイトをして学費をためて大学へ通ったそうでまだまだ奨学金が残っているが、毎月仕送りを10万円ほどしている。しかし、借金は一向に減らないなぜならば、そのお金を全てパチンコに使ってしまうから。」
私が、聞きたくないと嫌な表情を見せようが冷徹な父は御構い無しといったように彼の情報を読み上げる。
「ここまで言ったらお前ならどうすればいいかわかるよな」
冷たい目で私を睨みつける。いつもそうだ。
答えのわかりきった質問を投げつけて自分の思い通りの回答をさせる。
そうやって自分の都合のいいように会社を動かしてきたのだ。
しかし、今回に至っては私も折れるつもりは一切ない。後にも先にも蓮のような相手と出会えないと思ったから。
「私は彼と別れるつもりはありません。私はあんなに温かくて優しい人に初めて出会いました。
そう、お父さんと正反対。彼はお金がない家で育ったのかもしれないけれど、お金があったってこんな冷めきった家で、こんな話をしながらでないと家族とご飯が食べられないなら、私は自分が幸せでいられる方を選びます。」
(ああ、これは言い過ぎたついに私も勘当されるわ・・・)
「お前は、それでいいかもしれない。でも彼は違う。格好の出資者が現れたことで借金も奨学金もチャラになるも、そうなったことでさらに両親のパチンコ依存は進むことになるだろう。
さらに親戚中から迫害を受けることになる。どうしてかわかるか?母さんもそうだったから・・・」
予想をしなかった回答に私は思わず言葉を失った。
母は、私に自分のことを話すことはなかった。いつもイライラしていたから、私も母と話そうとしたこともなかった。
それから父は母の話をし始めた。