Sync.〜会社の同期に愛されすぎています〜
当日は、上から下まで完璧を目指した。
相手はあの杉原さんだ。
考えたくはないがきっと経験豊富だろうし、紳士だし、大丈夫だと高鳴る鼓動を必死に整えた。
仕事終わりの杉原さんのスーツ姿が好きで、一杯目のビールをゴクゴクと喉を鳴らしながら飲む姿が男らしいく、今日は変に意識してしまう。
私は、お客様に合わせたシフト制の仕事で杉原さんは土日休みで中々休みが合わなかったが今回は珍しく休みが重なった。そしてお互いに残業の多い激務のため次の日に響かぬように早めに切り上げるようにしていたが、今日はそんなことを気にしなくていいのだ。
いいお酒と、この夜へのちょっとした期待でいつもよりも酔いが回りやすく、またそれが私の緊張をほぐしていく。
「この後どうしようか……」
杉原さんの言葉の後に、私は彼の手をぎゅっと握った。
彼は、何も言わずに私の手を優しく握り返し指と指を絡ませた。
あの時の彼の指とは違い、細くて長くしなやか指は、ちゃんと私の中に入るのだろうか。
(大丈夫…)
心の中でつぶやいて、杉原さんの目を見る。お酒の力は思っているより偉大だ。
「翠ちゃん・・・どうしたの?酔った?」
わかっているくせにズルい。女の私から言わせるのかこの先の希望を。
杉原さんは腰に手を回してカウンターで隣に座る私の体に密着して、腰やお尻、太ももに優しく触れている。
どんなに強いウィスキーを飲もうが平然としていて、でもどこか甘えてくるような。
ぎこちなく触れた元彼とは全然違う。「女」というものを分かりきっている。
こんな大人の誘い方を私は知らない。
「帰りたくないってこと?」
耳元でボソッと呟く声だけで昇天してしまいそうになる。体中がほてり、女性ホルモンが一気に分泌されていく感覚
ああこうやって何人もの女の人を口説いてきたんだろう。
ついに今日、捨てる時がきた。私が28年間守り続けた「処女」を。
でも、こういう男の人の場合「処女は面倒くさい」と思うのだろうか。もし仮に、処女ということを伝えずにとんでもないプレイを要求されたらどうしよう。
会計をして、お店の外に出るとすぐに近くの高級ホテルを指差した。顔色の悪くなる私に「大丈夫?」と声をかける杉原さんに私は勇気を出して伝えることにした。
伝えることで少しは気持ちが楽になるかもしれないし、ここまで優しくてスマートな人なのだからきっとわかってくれるだろう。
「あの・・・一つだけ伝えておきたいことがあります。その・・・私、初めてなんです・・・・」