Bloody wolf



「まぁ、響ちゃんに翻弄させられる晴成も面白いから、すぐにくっつくのは困るけどねぇ」

愛らしい顔で毒を吐いた光希を蹴りあげたくなったのは、仕方ねぇ事だと思う。


「だよな。強者の響ちゃんVSウルフのヘタれ総長。おっもしれぇ」

爆笑した瑠偉の顔に、テーブルに置いてあった雑誌を投げつけた俺は悪くねぇ。


「ブヘッ・・・いてぇ」

顔を押さえて悶える瑠偉を見て、ちょっと胸がスーっとした。


誰がヘタれ総長だ。

ふざけんなよ。


俺は、泣く子も黙るウルフの総長だっての。

響特定で、ダメ男になるのは・・・ま、間違いじゃねぇ。


かっこよくて強いって言う俺のイメージが、崩れていくのを肌で感じずには居られなかった。






「晴成、明日には元の晴成に戻ってくださいよ」

「分かってる」

「響さんは今さら晴成がダメ男でも気にしないとは思いますが、他への示しがつきませんからね」

「なっ・・・」

はっきり言い過ぎだろうが、苛立ちをぶつけるように秋道を睨み付ける。


「ウルフの評判は落とせません。対外的にも」

冷静な顔でそう告げる秋道に、俺は大きな溜め息をついた。


「お前って昔から俺に追い討ちかけるの得意だよな」

「失礼な。これは叱咤激励ですよ」

ゆるりと口角を上げた秋道。

こいつの叱咤激励が一番怖いことを、俺は知ってる。


あ~しっかりしねぇとな。

知られちまったものは仕方ねぇし。

どうやって、そこから這い上がっていくか、だよな。


元々0からのスタートだし。

焦らずじっくりと行くしかねぇな。


でも、明日の体育祭は、響が俺のものだって見せつけなきゃなんねぇ。

響の周りをウロウロしてるハエも増殖し始めてるって話だしな。


一先ず、響の危険を取り除くために気合い入れるか。


気合いを入れ直した俺は、明日へと意識を向けた。






ーendー
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