いつか、きっと。
「この苦かビールば『美味しか』って思える日の来っとかな?私はまだ大人になりきれとらんとかもしれん。友也は『美味しか』って思うて飲みよっと?」

「大学のダチがみんな美味そうに飲むけん俺もそうなるかと思ったけどなぁ。正直言うて、そがん美味かと思えんばい。慣れるしかなかとかな」

良かった!友也も私と同じなんだ。

「別に無理して慣れんでもよかっじゃ?」

「男は男同士の付き合いってもんのあるけんな。明日美は無理せんでよかとぞ。まあそのうち慣れるさ。なあ父ちゃん」

ふーん、男同士ね。

どうせ女には分からない世界だとでも言いたいんでしょ。

でも、友也のお父さんも息子と一緒に飲めるなんて嬉しいんだろうな。

そういう意味ではこうやって家族揃っての飲み会も悪くないよね。

これも親孝行のひとつになるんだろうし。

「お父さん、お酌させて!それから、おじちゃんにもね」

だったら私もみんなと楽しく飲めるように、少しずつでも慣れていけたらいいな。




──時刻は夜の八時。

飲み会を始めたのが六時頃だったから、約二時間経過している。

私は今、友也の部屋に居る。

勿論ひとりきりではなく、友也とふたりきりで。

ベッドに横になり眠ってしまった友也の寝顔をただ見詰めているだけの私。

どうして今こういう状況になっているのかというと……。




「友也、ねえ友也。どうしたと、具合悪うなった?おばちゃん!友也が……」

「……そがん大声で言わんちゃよかって。ちょっと頭のガンガンするけん、ここで寝とく」

案の定酔っぱらってしまった友也がテーブルに突っ伏していたかと思うと、今度は畳の上でゴロンと横になってしまった。

「だめって!こがんとこで寝たら風邪引くばい。自分の部屋に帰って寝らんね。おばちゃん~私友也ば部屋に連れて帰るけん」

みんな盛り上がって楽しそうだから、心配させないように私も勝手することにした。

私の家で寝ようとする友也をなだめすかし、隣の御子柴家に連行することに成功。

< 145 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop