いつか、きっと。
席の並びは、左から友也、私、未来、瀬名くんの順。

映画が始まるまで待つ間、未来と瀬名くんは会話が弾んでいたようだから、早くも打ち解けてくれたんだとホッとした。

未来も瀬名くんも飲み物を右手側のドリンクホルダーに置いていたけど、友也は左手側に置いている。私のドリンクホルダーは右も左も空いている。

どっちに置こうかちょっと迷ったけど、友也に近い方の左側に置こうとしたその時……。

「明日美はあっちに置けば?」

私の右側のホルダーを指差して友也が言った。

「え、なんで?やっぱり友也がこっちに置くと?」

「いんや?そうじゃなかけど……」

なんでだろう?

ちょっと意味が分からなかったけど、友也の言う通りに右側に置いた。

瀬名くんとは席が離れてるからわざわざ話したりしなかったけど、両隣の友也、未来と雑談してるうちに場内の照明が落とされた。

その後しばらく経って、友也がなぜ私の飲み物を右側に置かせたのかを知ることになる。


公開を控えている話題作の予告編が終わり、いよいよ映画が始まる。

スクリーンをじーっと見つめていると急に左手が……。

「…………ぁ」

私の左手が友也の右手に取られ、しっかりと指を絡ませられた。

「嫌か?」

「ううん。嫌じゃなかよ」

もう映画が始まっているから顔を寄せ合って、小声で囁き合う。

なんだかいけない事しているみたいでドキドキが募る。

「じゃ、映画終わるまでずっと離さんけんな」

「うん」

右隣の未来とその隣の瀬名くんをチラっと盗み見てみると、スクリーンを見ながら時々笑い合ったり、言葉を交わしたりしているようだ。

楽しそうにしている二人を見ると、嬉しいような嬉しくないような複雑な心境だ。

「また今度、二人だけで来ようで。邪魔者なしでな」

友也も未来たちの方をチラッと見て、私の耳元でこそっと言った。

今日はみんなで楽しむのが目的だけど、映画を観てる間だけでもこうして二人だけのデート気分を味わったっていいよね?

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