いつか、きっと。
明日から仕事復帰だった。

一週間も休んでしまったから、その分を埋め合わせするためにも頑張って働かないといけないのに。

こんな気分最悪の状態でまともな仕事ができるだろうか?

私情を挟んではいけないと頭では解っているけれど。

意欲が湧かないこの状態……。

未来が飲まなかったコーヒーに手を伸ばし、ソーサーごとこちら側に手繰り寄せた。

まだ"美味しい"とは到底思えないブラックコーヒーを一気に飲み干す。

私、今日からコーヒーはブラックしか飲まないことに決めた。

なんの意地なんだか分からないけど、もう二度と甘いコーヒーなんか飲まない。

この苦いコーヒーを美味しいと思える日が来ると信じよう。

あんまり遅くならないようにとお母さんから釘をさされていたんだった。

まだそんなに時間は経っていないけど、もう帰ろう。

未来が置いていった小銭を連れて、レジに向かう。

私も自分のコーヒー代を足して、小銭だけでジャラジャラと支払いを済ませた。



「え……嘘ぉ。降ってる!」

ドアを開けて外に出ると、雨が降っていた。

天気予報では今夜降るなんて一言も言ってなかったはずなのに。

ついてないな……。

ここから家まで歩いて十分もかからないとはいえ、この雨の中濡れながら走って帰るのは避けたかった。

つい一週間前にどしゃ降りに見舞われてしまった苦い思い出が甦りそうになって身震いする。

苦いのは慣れないブラックコーヒーを二杯も飲んでしまったからだと自分に言い聞かせ、頭をブンブンと振った。

ここでしばらく雨宿りして小降りになるのを待とうかと思い始めたその時。

私の目の前に一台の黒い車が停車した。

見覚えの有りすぎるこの車は……。

途端に私の身体中に緊張が走る。

まさか、何で?

どうしてこんなタイミングで私の目の前に現れるの…………。

「明日美!傘持っとらんとか?家に帰るとやろ、乗れよ」

助手席の窓を開けて、雨の音に負けないように声を張って私に呼び掛けるのは、私の……親友の男。

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