課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「でも、海が寝てしまうと、ひとりは寂しいので、テレビをつけたままにしてるんです。

 行き倒れて寝てるから、睡眠学習のようにサスペンスが頭に入ってきて、そういう夢は見てます」

「そうだな。
 お前の脳はサスペンスに洗脳されている」
と雅喜は言った。

「それで名探偵になれるわけでもないだろうにな」

 お前がずっとお片付けの番組を見ているのに、家が片付かないのと同じだ、と言う。

「日中、寂しいなら、うちの母親を来させようか」
と言われ、

「け、結構です」
と言う真湖の声が裏返っていた。

 まあ、真湖さん、と昼間のこの家の惨状を見て言われそうだからだ。
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