課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「そういえば、お前はコンビニのものが好きなんだったな。
 母親に今度はコンビニで差し入れを買ってくるように言おう」
と雅喜が言い出したので、キッチンに戻りかけた雅喜の服をつかむ。

「待ってくださいーっ。
 それは違いますーっ」
としがみついた。

 うわっ、なんだっ!?
と雅喜が振り向く。

「お母様が持って来てくださる素敵なお菓子が、外に出られない私のひとときの癒しなんですーっ」

 わかったわかった、と雅喜が言ったとき、羽村が戻ってきた。

「雪乃さんに来いと言ったか?」
と雅喜が問うと、

「呼びましたよ。
 課長が呼べと言うから」
と羽村は、わざと素っ気ない口調で言う。

「この間、雪乃さんが来なかったら、あれだけ気にしてたくせにな」
と言う雅喜に、

「いつも行き帰りに待ち伏せてる猫が居なかったら、気になるでしょ。
 それと同じですよ」
と素直じゃない羽村が言った瞬間、チャイムが鳴った。
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