課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 その大人とも思えないくらいの無邪気な笑い顔に、ちょっとキスとかしてみたいな、と思っていたが、この子にキスとかしたら、もう逃れられない感じがするな、とも思っていた。

「そういえば、私が酔っていても、羽村さんは持ち帰られません」
と雪乃は真面目な顔で言ってくる。

「いや……持ち帰られたいの?
 っていうか、一回、持って帰ったじゃん」
と言うか、持ち帰らざるを得なかったというか、と思っていると、

「でも、特に悪いことはなさいませんでしたよ。
 ということは、羽村さんは噂ほどの悪い方ではないのでしょうか?」
と雪乃は小首を傾げながら、言ってくる。

 それはねー、君みたいな人に手を出すと、あとが厄介そうだからだよ、と思いながら、雪乃を見ると、雪乃は物珍しいものでも見るようにこちらを見上げている。

 なにか動物園の珍獣にでもなった気持ちだ、と思いながら、
「じゃあ……、悪い男なところ、見せてあげようか」
とからかうように笑って言ったが、雪乃は、

「はい」
と頷き、あの黒い瞳でじっと自分を見つめてくる。

 悪い男なところを見せるって、どうするんだろうな、と子どもが科学に興味を示すように思っているようだ。

「……ごめん。素直に頷かないで」

 やりにくいから……と思いながらも、雪乃に、そっと口づけてみた。
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