課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「やっぱり、みなさんと離れるのが寂しかったからですか?」
と訊いてくるので、

「いやあ、君と付き合えなくなるのが嫌だったからじゃない?」
と前方に広がる暗い夜道を見たまま、他人事のように語る。

 えっ、そんな……っ、と赤くなった雪乃だったが、窺うように、こちらを見ながら訊いてきた。

「あのー……私、もしかして、騙されてます?」

 その、森のくまさんにでも近づいていこうとするような、おそるおそるな口調に笑い、

「……かもね」
と言う。

 人気のない住宅街の道で雪乃の腕をつかみ、もう一度、そっと口づけてみた。

 前方からまた隆雄の車が戻ってこないか、ちょっと気にしながら――。




                           完



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