課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「うん。
 してみようよ。

 君が着物着たとことか見てみたいし。
 親とかに紹介するの手間も省けるしさ」
と言いながら、いや、いまどき見合いで着物着ないし、親来ないか、と思ったとき、いつの間にか真横に来ていた車の窓が開き、隆雄が、

「どっちかって言うとそれ、結納だろ、結納」
と言って、走り去っていった。

 ……結納。

 また一気に話が進んでしまったようだ、と思いながら、羽村は隆雄の車を見送った。

 そのまま歩いていると、静かになったので、なにかしゃべらなければと思ったらしい雪乃が言ってくる。

「え、えーと、そうだ。
 会社辞められるの辞められたんですね」

 そうだよ、と羽村は言った。
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