夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
「準備は良いか?皆の者」

真夜中、モリスデンの問い掛けに集まった者達は頷く。

今すぐ行くと聞かないラミンを説得し眠ることを忘れたように皆それぞれ準備に取りかかった。
国王達は兵の出向を命令し、セイラス達も剣の準備に余念がない。

「この剣が役に立つとは思わない。それでも、ミレイアを助ける為に出来ることは全てやる」

トニアスの力強い決意にセイラスも同意する。

モリスデンはどこにいるか分からないヴァルミラに問いかけてみるが何も帰ってこない。

「ラミンよ、やはりお前がこの戦いの鍵を握っておる。良いな?」

「ああ、切り札もあるからな。食いつくかどうかはわからんが…」

掌に乗る箱を見つめるラミンは意外にも落ち着いている。
一刻前の今すぐ行くと暴れた者とは思えないほどだ。

「ところでラミン、ミレイアの事は思い出したの?」

「……」

セイラスの言葉に何も答えないラミンは眉間にシワを寄せて前を睨んでいる。
セイラスは早く思い出してよねとチクリと言ってそれ以上問うのを諦めた。

「セイラス…」

「リノン、大丈夫。必ずミレイアは助ける。ついでにグラージャも倒して来るから心配要らないよ」

心配そうに見つめるリノンに余裕の笑みで返したセイラスはそれでも心配そうにしているリノンを抱き締めた。

「そんな顔してたらお腹の子にも影響出るよ。大丈夫、必ず皆無事に帰って来るから。」

「ええ…必ず帰って来て。待ってる…」

リノンとまだ見ぬ子供の為にも、この世界をグラージャの思うままにはさせない。
大事な妹、ミレイアを拐ったこと後悔させてやる。

リノンを抱き締めながらセイラスは黒い笑みを浮かべ胸の内に潜む憤りを沸々と燃え上がらせた。


「アルトバル…」

「サリアここは頼んだぞ。なんだ、今生の別れではないぞ、ミレイアを取り戻し必ず皆無事に帰ってくる」

「ええ、わかっています。ミレイアのことよろしくお願いします」

「ああ」

抱き締め合う国王と王妃。

セイラスとアルトバル国王をじっと見ていたのはエルストン。
視線に気付いたセイラスが問いかける。

「どうした?エルストン」

「いや…やっぱり似てるなと思って…」

「何が?」

「国王様もセイラスも顔付きがクリスリード様に似てる」

「は?どういうこと?」


「さっき、グラージャ達の過去を見てきた。ミレイアと一緒に」

「な…何だって!」

セイラスの大きな声に皆驚き注目する。
エルストンは先ほど見てきた過去について詳しく皆に説明した。

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