夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫

「そうか…ミレイアが無事で良かった」

「嫉妬に狂ったただのバカだな」

エルストンの説明を聞いてミレイアが無事でいるようで一同安堵したが、ラミンが吐き捨てた言葉に皆は言いたいことを飲み込み苦笑い。
ラミンも相当嫉妬深いよとは今の彼には言わないでおこうと皆心得てる。

「さて、そろそろいこうかの」

皆で魔法で敵地まで行くために大きめの魔方陣を描こうとした時、キースに呼び止められた。

「モリスデン殿、ちょっと…」

「なんじゃ、皆を移動させるにはちと面倒なんじゃ途中で話しかけるでない」

「すいません、でもちょっと耳に入れておきたいことがありまして」

そう言ってぐいぐいとモリスデンを引っ張って行ったキースは廊下まで出ると扉を閉め皆に聞かれないように小声で話した。

「私の夢見で嫌なものを見てしまったんです。ラミン様が…黒いものに覆われ正気を失い暴走を…」

「なんじゃと?」

「何が起こったのかはわかりませんが、周りは人間と魔物が入り交じり戦っていて、それはもう酷い惨状で…そこにラミン様が暴れ出し、さすがに私も見てられなくなったときに強い光りに照らされて目が覚めたのです。もう体は汗でぐっしょりなのに震えて小一時間ほどなおりませんでした」

実は3日前から毎日同じ夢を見ていたと青ざめたキースはうんざりした顔で告げた。
皆に話して良いものか迷い今まで話せなかったのだが、今これから起こるであろうことが予想されるのでモリスデンにだけは伝えとこうと思ったとキースは言った。

「わしだけに話したのは正解じゃ。余計な心配はさせん方がいい」

「しかし、もし本当にラミン様が暴走したら…」

「大丈夫じゃ、そうなった時はそうなったときじゃ。お前の夢見は未来を写す鏡。しかし必ずしもそのまま事が起こるとは限らんじゃろう?打つ手を変えれば未来も変わる」

「そうですね…」

「心配いらん!」

「いっ!?」

不安な顔をするキースの背中をバシッと叩きモリスデンは部屋へと入る。
キースは涙目になりながらモリスデンの後に続いた。

モリスデンが魔法をかけている間ついラミンの横顔を見つめて不意に目が合いそうになって慌てて逸らす。
あの夢見のラミンはこの上なく恐ろしく誰も近づけやしなかった。
強い光りの後どうなったかは分からないが…自分の夢見は当たる。
あの恐ろしい光景を思い出しぶるりと震えた。
キースはどうか今回だけは当たらないでくれと願わずにいられない。
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