夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
「さて、お前たちも疲れたでおろう。国で待ってる者たちもおる。帰ろうかの」

ぐすぐすと鼻を鳴らし聞き慣れたしわがれた声がして今度は反対側を振り向いた面々はその人物を見て驚いた。

「も、モリー!姿が戻ってる!」

トニアスの素っ頓狂な声。
若い姿は影形も無く、白い髪白く長い髭を生やした老人が涙を拭きながら立っていた。

「ああ、わしの姿も効力は失った。結局は姿を変えても魔法の力が無くなってしまえば元通りになってしまう。ずっとその姿でいるのは難しいのじゃ」

「モリ―、大丈夫?」

ヴァルミラが逝ってしまって涙を流していたモリスデンを気遣わしげにミレイアが声を掛ける。

「ああ、大丈夫じゃ。泣いてばかりもしておれん。また復興を一からやらねばならん」

「私も手を貸してやろう」

「ガゼント様、助かりますじゃ」

強い眼差しを取り戻したモリスデンに一様にほっとする。

「まずは一度帰るとしよう」

「待てジジイ、ちょっと寄りたいとこがある」

「何じゃ!わしも疲れておる。とっとと帰りたいのじゃ!」

「そりゃあんたの魔法で回復すりゃいいだろ?もうすぐ夜も開ける。今じゃなきゃ見れないんだ。俺とミレイアだけでいい、頼む」

「し、しかたないのう…」

何を思っているのか真剣な面持ちのラミンに渋々頷いたモリスデン。

「え?僕たちも行ってみたい!せっかくだからみんなで行こうよ!」

無邪気に言うトニアスにセイラスとエルストンも頷く。
え”と不服そうなラミンを余所にみんなで行こうと決まってしまった。

メリダヌス帝国軍は暫くこの地に留まり復興の手助けをするという。
ノーゼス国王と率いるノーゼス軍とも別れを告げ、向かった先は何もない丘の上。

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