夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
……

前王がまだ存命だった頃。
第一王子だったアルトバルのお妃候補が集められ舞踏会を開き選考会が行われ残ったのが男爵令嬢サリア、伯爵令嬢アリナ、そして公爵令嬢ルイーナだった。

第一候補だったのが当然爵位の高いルイーナ。
サリアは親友のアリナと最後まで残ってしまった事に困惑していた。

「アリナとお妃の座を争うなんて出来ないわ…」

「サリア、安心して。私はお妃候補を辞退するわ」

「え?でも…」

明るく行動的なアリナはウェーブかかった金髪に薄いブルーの瞳の美しい女性だった。
お妃候補は自分から辞退することなんて出来ないのに何を言うのかとアリナの突然の発言に困った顔をするサリア。

「あなたが一番王妃様に相応しいわ。あんな高慢ちきなルイーナに負けないで!」

令嬢の癖になかなかトゲのある言い方にうんとは言えないサリアは笑ってごまかす。

「でも…爵位からいったらルイーナ様やアリナの方が上だわ。私は既に落第よきっと…」

爵位がものを言う時代。
お妃候補は位の高い公爵侯爵か他国の姫君と相場は決まっていた。
しかし今回初めて貴族令嬢全てにお触れが回り広くお妃候補を募るために舞踏会が開かれた。
後に残ったのがこの3人だった。

公爵、侯爵の次に位の高いのは伯爵、子爵、男爵
なぜ自分が最後まで残っているのかわからないが、一番爵位の低い男爵令嬢のサリアには到底公爵令嬢のルイーナに敵うわけがないと思っていた。

「大丈夫よきっと、私には確信があるの。それにいい考えがあるのよ」

ウフフと不敵に笑うアリナに一抹の不安が過る。

「でも…何で?アリナはそんなに自信があるの?それに辞退なんて…」

「ふふ、それはそのうち教えてあげるわ。それに私は……」

急にモジモジし始めたアリナにサリアは首を傾げる。
「他に好きな人が出来たの!」

「え!?」

突然の告白に目を見張るサリアをよそに夢見がちな表情のアリナは語り出す。

「私…私ね、ハインツ様が好きなの!キャッ」

とうとう言ってしまったと言わんばかりに赤い顔を隠し照れるアリナに唖然とする。

ハインツ・ドリスター
宰相ドリスター公爵の嫡男で次期宰相。
今はアルトバル王子の側近を勤めていた。
細身でグレーの柔らかそうな髪に深いブルーの瞳には知的そうなモノクルを付けいつもアルトバル王子の傍らにいる。

「う…うそ…」

< 31 / 169 >

この作品をシェア

pagetop