夜が明けるとき ~続・魔法の鍵と隻眼の姫
「何を言ってるんだラミン!ミレイアだろ!目でもおかしくなったのか?」
トニアスがミレイアに寄り添いラミンに話し掛ける。
起き上がったラミンは頭を押さえ眉間にシワが寄る。
「そんな奴知らねえ…頭痛てえ…」
ミレイアに目もくれず呟くラミンに皆が息を飲んだ。
まさか…
「ラミン、わしが分かるか?」
「なんだよジジイ、若返ってもジジイ言葉は変わらんな?」
「ラミン!お、俺は?」
「よう!デスタじゃねえか。マリアと結婚したんだってな?おめでとう」
「え?じゃあラミン僕は?」
「なんだよトニアス、アホみたいな顔して」
「アホじゃないし…じゃあ、この子は?」
「…知らねえな」
ぎろりとラミンはミレイアを睨みまた痛むのか頭を押さえる。
ミレイアはそんなラミンに何が起こったのか知るよしもなくポロポロと涙が溢れた。
「私を見ろ、私は誰だ?」
ガゼントがラミンの両頬を掴み真正面から見据えた。
「あんたは…ガゼント…ヴァルミラ…と…同じ…ま…もの」
ルビー色の瞳から目が離せずなんとか言葉を発するラミンはまるで操られてるよう。
「グラージャの呪いだ。やはりあのナイフに仕込んであったのだろう。詳しくはもう少し調べてみないとわからないが…恐らくもっとも身近な存在…愛する者を忘れる何かだ…」
「そんな…じゃあ、ミレイアは…」
震えるミレイアの肩を強く抱いたトニアス。
ミレイアが涙目でラミンを見つめるとラミンははこちらに目を向けぐっと睨み直ぐに逸らした。
ラミンの横顔が歪み目の前が掠れていく…。
「…ぁ…」
「み、ミレイア!?」
この状況に耐えきれなかったミレイアは気を失いトニアスは慌てて支える。
そんな状況でもラミンは一瞥を向けるだけで我関せずという態度に皆驚き動揺する。
「どうなっちゃってんだ?おい…」
「兄上…」
ルシアンとエルストンはなす術もなく立ち尽くし、別室に連れてかれたミレイアを見送りラミンを見つめた。
ブキー
ずっとエルストンが抱いていたグリフォンが小さな鳴き声を上げる。