白銀のカルマ
 奥野親子が出て行った後、腫れた頬を濡れた布巾で冷やしながら正座して俯く和巳。正臣は箪笥にもたれかかり項垂れていた。

「……正臣……。あんた、優一くんと何してたの……?」

あんなことがあった後で、到底喋る気にもなれるはずもなく、この空間に沈黙が続いたが、和巳はそれでもさっきの出来事について根掘り葉掘り聞いた。

しかし、なかなか答えようとしない正臣。

優一を想っていた相手を前に先ほどの出来事について言及出来るはずがなかった。

しかし下手な説明や言い訳は返って自分を苦しめるだろう。

和巳の前から逃げ出したい気持ちで山々だったが、仕方なくこれまでのことを洗いざらい話すことにした。

「………愛し合ってたんだ。俺達」

「え………?」

「………俺と優一は。」

「嘘」

「……嘘じゃない。本当だ。」

「…嘘よ!」

彼は、優一を愛していた。

しかし感情を無理矢理にでも押し殺すタイプの人間だったので、優一にとっていい〝講師″いい〝人″を10年以上にも渡って演じ続けてきた。

卑怯なやり口であったものの、この前ドアの隙間から見えた光景全てが彼が出来る精一杯の〝愛情表現″だったのだろう。

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