白銀のカルマ
理解不能な思考回路の従兄は、今日も何喰わん顔で意中の彼の演奏を聞いていた。

自分ならあんなにいかがわしい触り方やキスをした翌日は罪悪感で支配され直視なんて無理だ。

相手が望んでもいないことを一方的に強要しているのだから、犯罪と大して変わらない。

諫めるべきだったのかもしれないが、彼の生い立ちを考えると容易く責めたてられる話でもなかった。

好きになる相手は結ばれない人ばかりでほぼ失恋三昧。

これまでに何度泣き腫らした瞼を見たことか。

俺みたくデリヘルでも呼んで日々の鬱憤を晴らせば良いのにと思うが、どこの馬の骨か分からない男に
奉仕してもらう発想自体持ち合わせていない程、純粋なのだろう。

自分も相当薄汚れた思考の持ち主だが、あんな光景を見た数日間の気分は普段に比べてどんよりしていた。

この酷い虚無感を男娼に解消してもらうべく風俗店に出向き、行為の最中に規約違反である〝本番″行為をせがんだが
予想通りあっさり断られた。

いつもなら簡単に引き下がれるのに、その日の俺は本当にどうかしていた。

「うるさい。お前は黙って客の言うことを聞け」

殴りつけ相手を怯ませると無理やり挿入したのだ。

「痛い…痛い、辞めてください!」

あまりの激痛に顔を歪め辞めるよう男娼は懇願してきたが、それをも無視し鬱憤を晴らすと通常料金に1万円上乗せして
その場を後にした。

手荒いことをしたのでそれ相応の罰が下ることも承知の上だったが、その代償はやはり〝痛かった″。

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