白銀のカルマ
「正臣さん!?」

「……うっ……」

後日、あの男娼の〝知り合い″にやられた。

帰宅した途端、複数人からの酷いリンチで血まみれになった姿のまま、家の玄関に倒れ込んだ。

しかしそんな自分を責めたてることもなく、優一は真っ先に手当を始め、終えた後も献身的な介抱を行った。

「…病院はいいよ」

「……だめですよ!骨が折れてるかもしれないじゃないですか!」

病院沙汰になることはどうしても避けたかったので頑なに拒んだが、結局粘り強い説得に根負けし病院に向かうことにした。

優一の見立て通り、足を骨折しており全治2週間の怪我と診断された。

本当は口を噤んでおきたかったがこういった診断結果が下った以上、従兄に訳を話さざる得ない。

こってり絞られることを予想していたが、それ以上の物が俺を待ち構えていた。

「あんたはどうして何度同じこと繰り返せば気が済むの!?本当学習能力がないわね!」

「………本当、今は反省してるよ。治療費は俺の給料から差し引いてくれていいから」

「当たり前でしょう!?引いたって足りないわよ!!」

普段は人の意見などまともに聞き入れる気がない俺だが、今回ばかりは従兄の説教を黙って長時間聞き入れた。

3年前バーで乱闘騒ぎを起こした際、自分の代わり周囲に謝って回ってくれたのも、治療費の支払いや付きっ切りで
看病をしてくれたのも全て従兄だからだったからだ。

従兄に多くの借りがある俺は過酷な無報酬労働が決定しても、反抗的な態度を取れるはずもなく、不本意な現実に顔を
歪めるのが精一杯だった。

しかしこのもやもやした気持ちをどうしても解消したかった俺は、まだ万全ではない体を無理やり起こし、屋上で一服した。
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