あたしを知らないキミへ
「恵美加、お母さんそろそろ下に行くけど、どうする?」
「あたしはもう少しここにいるよ」
「そう。じゃーお母さん行くね。おやすみ」
「おやすみ」

あれからあたしは、しばらく一人で空を眺めていた。
ふいに、冷たい風があたしの顔を撫でた。
だけど、それがなんだか居心地がよかった。
それにつられて、あたしは目を閉じた。

冬の匂いと、優しい風の吹く音。

そして、色んな記憶が蘇ってきたんだ。

「あーー。バカだ、あたし・・。あの時からだったんだ・・」

なぜだろう。
あたしの目から、とめどなく涙が溢れ出したんだ。
だけど、それを紛らわすようにあたしはまた、強く目を閉じたーー。



あたしがまだ中学2年生の頃。
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