あたしを知らないキミへ
バカで、どうしようもないプライドがあった。
どうせ振られるのなら、告白なんてしないほうがいい。
惨めな姿になりたくなかった。

幸い、キミには彼女がいなかったから、あたしは内心安心してたんだ。
だけど、ある日突然キミに彼女ができた。

その彼女は、あたしも知る人で、それがなおさら苦しかった。
どうせなら、あたしの知らない人だったらよかったのに・・そんなことを何百回も思った。

苦しすぎて、彼女の悪いところを見つけては、自分のほうがいいって言い聞かせてきた。
そうじゃなきゃ、やってられなかった。
だけど彼女は、自分が思っているような人ではなくて、すごくすごく優しい人だった。

夏祭りの時は、屋台でキミを見つけた。
スーパーボールと書かれたところに、キミは一人で座っていて、小さな子供に笑いかけていた。

少し悪い評判があって、幻滅したはずだったのに夏祭りのあの姿を見て、本当は優しい人なんだって分かった。
無邪気に小さな子供と笑い合っている姿は、とても輝いていた。
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