クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
そんな彼に名前を呼ばれた桑井さんは「ひっ」と短い悲鳴をあげ、つかんでいた私の手首を離した。
ようやく解放されて私はほっと息を吐きだす。
ずっと力任せにつかまれていた私の手首には、くっきりと赤く指のあとがついていた。
じくじくと痛む自分の手首を見下ろしていると、ゴゴゴゴゴと地鳴りが聞こえてきそうなほどの殺気を感じて顔を上げる。
たぶんただの錯覚だと思うけれど、南部長の背中から黒いオーラが立ち上っているように見えた。
「自分の意志でここに来たと言ったわりには、かなり強く宮下の腕をつかんでいたようですね」
「いや、ええと。それは……」
部長に問われた桑井さんは、涙目になって首を横に振る。
南部長は腕を伸ばすと、そんな彼の首根っこをつかみ耳元に口をよせた。
そして、それまでの慇懃無礼に感じるほど丁寧だった部長の口調ががらりと変わった。