クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「べ、別に俺は無理やり連れ込もうなんてしてませんからね。遙ちゃんがここに来たのは、自分の意志で……!」
言い訳するように言った桑井さんに、南部長の表情が凄みを増す。
「へぇ……。宮下を馴れ馴れしく遙ちゃんと呼んでいるんですか。ずいぶん親しいんですね」
地面が震えそうなほど低い声に、殺意まで感じさせるようなものすごい目力。
そんな彼に見据えられた桑井さんは、ヘビに睨まれた絶体絶命のカエルのように脂汗をかいて必死にとりつくろう。
「な、馴れ馴れしくてすみませんっ。遙ちゃんじゃなくて、宮下さんですっ!」
彼の訂正の言葉を聞きながら、南部長は桑井さんに掴まれた私の手を見て眉をよせた。
部長は百八十五センチの長身に整った男らしい顔をしているから、眉をわずかにひそめるだけでものすごい迫力がある。
「桑井さん。とりあえず、その汚い手を離しましょうか」
穏やかに言いながらこちらに近づく。
けれど口調とは反対に、南部長からはすさまじい威圧感が放たれていた。