クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


 久住常務は俺を見つけると、こちらに近づいてきた。

「南くん、例の件なんだけどその後状況はどうだい?」

 そうたずねてきた彼に、俺は声のトーンを落とした。

「常務、こんな場所でそのお話は」

 眉をひそめてやんわりとくぎをさすと、常務は「おっと」と口に手を当てる。

「悪い悪い。ほかの社員の耳に入るとこまるね。場所を変えようか」

 肩をすぼめた彼にため息をつきふたりでフロアを出る。
 すると、その様子を遙が不思議そうな表情で見ていた。

  
 遙の視線に気づいた久住常務がごきげんに手招きをする。
 遙はこちらに近づいてきて小さく会釈をした。

「久住常務、お疲れ様です。財務管理部に御用でしたか?」

「あぁ。南くんにちょっとね」

 意味ありげな視線を向けられ、俺は苦笑しながらうなずく。

              
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