クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


 しばらくして、沈黙をやぶるように新谷さんが口を開いた。

「――なんてね。冗談」

 笑いをこらえた声に、千波さんがようやく瞬きをして表情を取り戻した。

「ちょっと。変な冗談はやめてくださいよ」

「一瞬本気にした?」

「するわけないでしょ」

 千波さんは新谷さんに掴まれた手を引き抜きながら不機嫌な口調でそう言う。

 からかわれて怒っているのか、千波さんの頬は真っ赤になっていた。
 その様子を新谷さんが口元ににやにやした笑みを浮かべながら眺める。
    
 言い合いばかりしているように見えるけれど、もしかしたらこのふたりは相性がいいのかもしれない。

「まぁそんなことよりも、今の状況で南部長と宮下さんが付き合うのって、大丈夫なのかな」

 新谷さんは空気を変えるように椅子に腰かけなおし、視線を私の方に向けた。

「今の状況って、どういう意味ですか?」

「宮下さんは知らない? 今うちの会社の水面下で権力争いがおこっていて、内部分裂寸前だって噂」

「権力争い……」

 新谷さんの言葉を繰り返す。そんな話、聞いたことがない。
              


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