クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「いや、宮下さん。派閥争いはあくまで噂だからね! そんなに深刻にならなくても……」
私を気の毒に思ったのか、新谷さんが慌てたようになぐさめてくれる。
「ちょっと新谷さん。なんの確証もない噂なら、無責任に不安をあおるような話題を持ち出さないでくださいよ」
「ごめんってば。宮下さんならその争いの真相をくわしく知ってるかなぁと思って聞いてみただけで、別に不安にさせるつもりじゃなかったんだって」
そう言いあう新谷さんと千波さんの声を聞きながら私は考え込む。
うちの会社の水面下でそんな争いが起きているなんて知らなかった。
もしこのまま内部分裂まで発展してしまったらどうしよう。
私は父も兄も久住常務も、そしてもちろん部長のことも大好きだ。
そんな人たちが権力をめぐって争いをしているなんて悲しいし。
四人ともこの会社には決して欠かせない重要な人たちで、どちらが勝ったとしても経営陣の間に入った深い亀裂は会社の根幹を揺るがす事態になるだろう。
それにグループの頂点に立つ宮下不動産ホールディングスが揺らげば、その子会社や関連企業で働く一万人以上の従業員を不安にさせる。
それは絶対にさけなければ。
私にできることはなにかないだろうか。
私は指輪がはまった右手を見下ろしながら必死にそう考えていた。