クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


 仕事を終え自宅に帰る。
 リビングに入った私に母が「おかえり」と声をかけてくれた。

「ただいま」

 キッチンに立つ母に近づくと、いい香りがしてきた。
 鍋の中には我が家の定番のラタトゥイユが煮こまれていた。

「いいにおい」

 思わず目を閉じてつぶやくと母はくすくすと笑う。

「今日は恵介くんのおうちに行かないの?」

「うん。今日はちょっと、家でゆっくりしようかなと思って」

 新谷さんからあんな話を聞いてから、まだ気持ちの整理ができていなかった。
 どんな顔で部長の家に行けばいいのかわからない。

「夕食の支度、手伝うね」

 複雑な気持ちをごまかすように明るく言って手を洗う。
         

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