クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました

 
 必死に私を探し、助けに来てくれたんだろう。
 額には汗か浮かび、肩で息をしていた。


 彼は私の顔を見て、そしてこぶしを握り殴りかかろうとしていた桑井さんを見た。

 彼の表情が変わる。
 その瞬間空気がぴんと張りつめて、ものすごい怒りが伝わってきた。


 彼はためらうことなく大股でこちらに近づくと、桑井さんの服の背中の部分を鷲掴みにして私から引き離す。
 後ろに引っ張られバランスを崩し天井を仰いだ桑井さんの腹部に、容赦なくこぶしを打ち込んだ。


 背中を思いきり固い地面にうちつけた桑井さんが、「ごふっ」と苦しげなうめき声をもらしお腹を押さえて丸くなる。

「なんだよお前!」

 それまであっけにとられていた茶髪と長髪のふたりの男が、われに返ったように怒鳴り声をあげ部長を取り囲んだ。

             
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