クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「まさか、怖がったりしませんよ。こうやって温かく歓迎してもらえてとてもうれしいです」
そう言うと、恵介さんはほっとしたように口元をほころばせる。
「それにしても花緒里さん、本当に美人でスタイルがいいですよね。もしかして、モデルさんですか?」
私がたずねると、花緒里さんは「まさか」と首を横に振った。
「TKクリエイションというIT系の企業で社長秘書をしています」
その社名は最近よく耳にする。プロジェクションマッピングやVRを使った演出で国内外の大きなイベントを手掛ける、今話題になっている会社だ。
「わぁ……! そんな会社の社長秘書をされているなんて、花緒里さんすごいですね」
きっと美しいだけじゃなく、気が利いて頭の回転も速い人なんだろう。
思わず私が顔を輝かせ尊敬のまなざしをむけると、花緒里さんが「うっ」とつぶやいて口元を手で覆った。
「無垢な笑顔がまぶしすぎて、直視できない……!」
「花緒里さん?」
なにごとだろうと目を瞬かせる私に、恵介さんは真顔で首を横に振った。
「妹は気にしなくていい。変人だから」