クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「なによ、兄さんだってそんな涼しい顔ですかしてたって、どうせ心の中じゃ遙さんがかわいくて悶絶しているくせに」
「遙のかわいさに悶絶するのは当然だろ」
「開き直ったわね……!」
突如始まった兄妹けんかに目を丸くしていると、お父さんとお母さんが「さぁさぁ」と私に家に上がるように促す。
「この子たちは無視して、遙ちゃんどうぞ入って。遙ちゃんが好きなものを恵介から聞いて、いろいろ用意していたのよ」
「あ、ありがとうございます」
うきうきしながら私の腕をとったお母さんに頭をさげると、それに気づいた恵介さんが慌てて声をあげる。
「あ、こら。勝手に遙を連れて行くな!」
「男のくせに心が狭いな、恵介。お前うるさいから帰っていいぞ」
「いや、俺の結婚の挨拶に来たんだからな?」
「かわいい遙さんだけいれば十分よ。私たち四人で仲良く楽しんでいるから、兄さんは車で待っていたら?」
「ちょっと、俺への対応ひどすぎないか?」
凛々しく有能でしかも腕っぷしの強い彼も、実の家族には太刀打ちできないらしい。
眉をさげて困惑気味の恵介さんを見て、思わずぷっとふきだしてしまった。
私がこらえきれずに笑っていると、恵介さんが不思議そうにこちらを見る。
私はその視線に気づいて笑いをこらえながら「なんでもないです」と首を横に振った。