クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


 入社してしばらくすると、恵介さん……ではなく南部長が社内でも特別な人なんだとわかった。

 公認会計士の資格を持つ彼は、以前は大手監査法人に勤めたくさんの大口クライアントを担当するエリートだったらしい。

 その有能さをかわれヘッドハンティングされた彼は二十九歳という若さで宮下不動産ホールディングスの財務部の部長を務めていた。

 このまま出世すれば将来役員になるのは間違いないと噂されるほどの人。

 しかも、将来性だけではなくその整った容姿と落ち着いた言動で、女性社員からの人気がものすごく高い。

『南部長かっこいいよね~!』なんて声を聞くたび、胸の奥がずきりと痛んだ。


 たしかに彼は魅力的だ。
 仕事中は口数も少なく表情をあまり変えずに淡々と仕事をするけれど、周りをよく見ていて誰が困っているとすぐに気づいてフォローしてくれる。

 普段はぶっきらぼうなのに実は優しくて頼りがいがあるなんて、少しずるいと思う。
 だって、こんなに素敵だったら、部長をみんなが好きになっちゃうじゃない。



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