クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
昨日は財務課の先輩と共に取引先の銀行員の桑井さんとの飲み会に同行した。
普段私は社外の人との飲み会には参加しないけれど、先輩の新谷さんにどうしてもと頼み込まれたのだ。
少し強引にお酒を勧められ、私と新谷さんがすっかり酔っぱらってしまった頃、桑井さんが『渡さないといけない大切な書類をホテルに忘れてきてしまった』と言い出した。
『ホテルが近いなら今から取りに行きましょうか』と提案した新谷さんにうなずいて三人で店を出て、そして歩いているうちにいつのまにか新谷さんとはぐれてしまった。
ふたりきりになったとたん私の腕をつかんだ桑井さんに、ホテルに連れ込まれそうになった。
そこに駆け付けた南部長が助けてくれて……。
そこまで思い出して不思議に思う。首をひねっていると、ようやく目が覚めてきたのか私の表情に気付いた部長が「どうした?」とたずねてきた。
「あの、昨日はどうしてあそこに南部長がいたのかなと思って……」
私が疑問を口にすると、部長は「あぁ」とうなずいた。
「真一から連絡がきたんだよ。妹がまだ家に帰ってこないって。調べたら新谷が宮下を飲み会に連れて行ったって言うから、不安になって様子を見に行った」