クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
真一というのは私の兄だ。
過保護な兄は私になにかあるたびに心配して直属の上司である部長に連絡してくるのだ。
昨日ホテルに現れた南部長は、息を切らし取り乱した様子だった。
あんなに必死になって私を探してくれていたんだと思うと、胸がきゅっと苦しくなる。
「ご、ご迷惑をおかけしてすみません……っ」
慌てて頭を下げると、部長は私の頭をぽんぽんとなでた。
「お前が悪いんじゃないんだから、謝る必要はない。勝手に接待の場に連れ出してそのまま放置した新谷が悪い」
私に向かって優しい言葉をかけたあと、後半のセリフはガラッと声色が低くなる。
「新谷は後でシメる」なんて不穏なつぶやきが聞こえぎょっとした。
「昨日は相当飲まされたみたいだけど、二日酔いにはなってないか?」
部長に問われ、私ははっとしてうなずく。
「はい。大丈夫です」
「じゃあ、昨日のことはちゃんと覚えてるか?」
その質問に、首をかしげる。
そういえばどうして私は部長の腕枕で寝ているんだろう。