クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました

「俺、銀行の執行役員の親族なんだよ。あんまり俺の機嫌を損ねない方がいいぞ。俺に失礼な態度をとったせいでうちの銀行が融資をとりやめたらどうすんの? 遙ちゃん、責任とれんの?」

 耳元でそう言われ、どうしていいのかわからなくなった。

 私のせいでうちの会社に迷惑をかけてしまうなんていやだ。
 でもいくら役員の親族とはいえ桑井さんひとりの意向で銀行が大口の融資を撤回するなんてありえない気もする。
 だけど、私の言動で彼が怒ってしまったのも事実だし……。


 アルコールのせいで思考が定まらない。考えれば考えるほど混乱していく。

「ほら、さっさとこいって」

 乱暴に腕を引かれ、転びそうになる。
 とっさにバランスをとるために、自分の意志とは関係なく足が一歩二歩と前に出た。

 入口の自動ドアが開く。
 明るいホテルのロビーから「いらっしゃいませ」とスタッフの声がした。


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