クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました


 兄は胸を押えて畳に倒れ、父はスマホを抱きしめ泣くというカオスな状況の中、ひとり冷静な母はテーブルにお茶を置いてくれた。

「恵介くんと遙が結婚するのね。おめでたいからお赤飯たかなきゃ」

 父と兄は動揺しすぎだけれど、母は逆に動じなさすぎる。
 まさかすんなり祝福されるとは思わなかった。

「お母さん、反対しないの?」

「あら、遙は結婚したくないの?」

 逆に問いかけられて、私は慌てて首を横に振る。

「ううん。結婚したい!」

 ずっと憧れていた部長と結婚できるなんて、夢みたいだ。私が力強くそう言うと、母は微笑んでうなずいた。

「恵介くん。遙は過保護に育てられたせいでまだまだ世間知らずな娘だけれど、どうかよろしくお願いしますね」

「ありがとうございます。遙さんを必ず幸せにします」

 深く頭を下げ力強く言うと、部長はこちらを見た。
 その真剣な視線に心臓ががきゅんと飛び跳ねる。

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