クールな部長の独占欲を煽ったら、新妻に指名されました
「あなた。それはもともと『およめさん』って書いてあったのを見て、『遙がお嫁にいくなんてさみしいから、ここにお父さんのって書いてくれ』って駄々をこねて無理やり書かせたんでしょう?」
お茶がのったお盆を持った母が、あきれたように言う。
「む、無理やりなんかじゃない! 遙はお父さんが大好きだから素直な気持ちを書いたんだよな?」
慌てた様子の父にスマホをぐいぐい見せられて、私は首をかしげた。
スマホの写真をよく見ると『おとうさんの』と『およめさん』の文字の濃さが違った。
印刷されたものの上に手書きで『おとうさんの』と書き加えられているように見える。
「そう言われれば確かに、お父さんがすねてしばらくご飯を食べなかったから、なんだかかわいそうになって卒園アルバムに書き足してあげた気がする」
「この写真はお父さんの宝物なのに、ぶちこわすなんてひどい……!」
父はスマホを胸に抱きしめ、しくしくと泣き出してしまった。